ホントにわかる!申請手続きのプロが書いた全省庁統一資格の取得ガイド


このページは、2023年8月に出版した電子書籍「ホントにわかる!申請手続きのプロが書いた全省庁統一資格の取得ガイド~具体的事例をもとに等級と発注予定価格をシミュレーション!」をホームページ用に手直しし、掲載したものです。

自分で手続きを行う、自社で全省庁統一資格を取得するという人は、ぜひ、参考にしてみてください。


はじめに:全省庁統一資格を取得したいとお考えのみなさんへ

みなさん、こんにちは。本書をご購読いただきありがとうございます。行政書士法人スマートサイド 代表行政書士の横内と申します。みなさんがこの本を手に取っているということは

  • 全省庁統一資格の取得を検討している
  • 取引先から全省庁統一資格を持つように言われている
  • 社長から○○省の入札に参加するよう業務命令があった

というように、全省庁統一資格に関する情報を探しているのかもしれませんね。

私は行政書士登録後10年近くに渡って、入札参加資格の申請手続きを主な業務としてきました。東京都や神奈川県といった地方自治体はもちろんのこと、都市再生機構などの独立行政法人、そして本書で取り上げる省や庁の入札に関する申請手続きです。

「まったくはじめて、知識ゼロの人」にとって、入札に関する手続きは、非常に難しく感じることでしょう。全省庁統一資格も例外ではありません。

そのため、本書では、初心者の人でも、わかりやすく理解できるように説明しています。また、本書を読むことによって、全省庁統一資格の80%は理解できるように記載したつもりです。国の機関である省や庁の入札資格について、ここまで詳細に記載したものは、他に類がないかもしれません。

申請の仕方や必要な書類についてはもちろんのこと、等級の格付け方法や「A」「B」「C」といったランクのシミュレーション、さらには外国事業者や合併・分割といった特殊な申請など多岐にわたって記載していますので、ぜひ、最後までお読みいただければと思います。

それでは、早速、本文へ!

第1章 全省庁統一資格の基礎知識

この章では、全省庁統一資格の大まかな概要について、解説します。

「取引先から突然、急いで全省庁統一資格を持つように言われている」「社長からいきなり、防衛省の入札に参加できるようにして欲しい!と指示を受けた」というような場合、これから説明する基礎知識について理解があるのとないのとでは大違いです。まずは、「全省庁統一資格って何?」という部分から理解していきましょう。

1 全省庁統一資格とは

(1)国の機関である省や庁の入札に参加するための資格

まず、全省庁統一資格とは、国の機関である省や庁の入札に参加するための資格のことを言います。「入札に参加するための資格?」と疑問に思った人もいるかもしれません。

実は、行政が実施する入札は「いつでも、だれでも、自由に」参加できるわけではありません。入札参加資格という資格をあらかじめ持っていないと、いざ「この案件の入札に参加したい!」と思っても、入札に参加することができないのです。

入札参加資格を取得するための手続き(申請)が、入札参加資格申請です。

みなさんが、国の機関である省や庁の入札に参加するには「全省庁統一資格」が必要で、全省庁統一資格を取得するには「全省庁統一資格を取得するため申請手続き」が必要なのです。

全省庁統一資格を取得すると、以下の各省庁の入札に参加できるようになります。

全省庁統一資格の対象となる省庁
衆議院 参議院 国立国会図書館 最高裁判所 会計検査院
内閣官房 内閣法制局 人事院 内閣府本府 宮内庁
公正取引委員会 警察庁 個人情報保護委員会 カジノ管理委員会 金融庁
消費者庁 こども家庭庁 デジタル庁 復興庁 総務省
法務省 外務省 文部科学省 厚生労働省 農林水産省
経済産業省 国土交通省 財務省 環境省及び防衛省で外局及び付属機関などを含む

(2)東京都の入札や神奈川県の入札との違い

みなさんの中には、東京都や神奈川県といった地方公共団体の入札参加資格を持っている人もいるかもしれません。東京都の入札に参加するには東京都の入札参加資格を、神奈川県の入札に参加するには神奈川県の入札参加資格を持っている必要があります。

ときどき、「総務省は東京都内にあるのだから、総務省の入札に参加するには、東京都の入札参加資格が必要なのではないか?」という質問を受けることがあります。しかし、これは間違いです。

総務省の所在地が東京都内にあったとしても、当該入札案件の「発注者」は総務省です。そのため、総務省の入札に参加するには、東京都の入札参加資格ではなく、全省庁統一資格を取得する必要があります。所在地を基準に判断するのではなく、あくまでは発注者(発注機関)を基準にするわけです。

また、「警視庁の入札に参加するには、全省庁統一資格が必要である」と勘違いされている人もいます。確かに警視「庁」である以上、全省庁統一資格が必要とも思えますが、警視庁は東京都公安委員会の組織になります。そのため、警視庁の入札に参加するには、全省庁統一資格ではなく、東京都の入札参加資格が必要です。警察庁の入札には全省庁統一資格を、警視庁の入札には東京都入札参加資格を取得しなければならない点を理解しておいてください。

さらに、弊所では、お客さまからのご依頼で、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の入札参加資格を代理取得した経験があります。JAXA(宇宙航空研究開発機構)と聞いて、「宇宙の入札参加資格?」という考えが、一瞬、頭の中をよぎりました。「日本をはじめとしたアメリカやフランスなど世界各国が、宇宙の入札に参加するのか?そんな世界を股にかけるような入札制度が存在するのか?」と、突拍子もないことを想像しましたが、そんなことはありません。JAXA(宇宙航空研究開発機構)のホームページには、「国(中央省庁)の統一資格(「全省庁統一資格)」をもって有資格者といたします。」との記載がありますJAXA(宇宙航空研究開発機構)は、国立の研究開発法人ですから、国の機関です。国の機関への入札に参加するのですから全省庁統一資格が必要になるわけです。

すこし話しがそれましたが、「何(どこ)の入札参加資格を取得すればよいのか?」わからないという人もいます。そういった場合には、ご自身が参加しようとしている入札案件の発注機関はどこ(誰)なのか?その発注機関は、何の資格(全省庁統一資格?東京都の資格?それとも区市町村の資格?)を求めているのかを、必ず確認する必要があります。

2 対象業種

全省庁統一資格を取得すると、国の機関である省や庁の入札に参加できるとして、どういった分野(品目)の入札に参加できるのでしょうか?全省庁統一資格の「営業品目」は、全部で71に分かれています。

(1)物品の製造

物品の製造は、以下の27の営業品目に分かれています。

営業品目 具体的事例
衣服・その他繊維製品類 制服、作業服、礼服、寝具、テント、シート、絨毯、カーペット、タオル等
ゴム・皮革・プラスチック製品類 ゴム、タイヤ、かばん、合成皮革等、FRP製灯塔等
窯業・土石製品類 茶碗、湯呑、皿、ガラス、陶磁器等
非鉄金属・金属製品類 非鉄金属、金属、アルミ、銅、ステンレス、チタン、ニッケル、鋼材、鋼管、ガードレール、パイプ、鉄蓋、鋳鉄、鉛管、ビニール管、ボルト、ナット、ワイヤーロープ、刃物、手工具、ブイ(標体等)
フォーム印刷 フォーム印刷(単票、伝票、連続、複写、ミシン加工、ビジネス帳票等)
その他印刷類 シルクスクリーン、シール、パンフレット、はがき、ハンドブック、オフセット印刷、軽印刷等
図書類 美術、活版、グラビア、雑誌、本、DVD、CD、図書、刊行物、映像ソフト、書籍、新聞等
電子出版物類 電子出版、PDF、電子書籍、CD-ROM、DVD-ROM等
紙・紙加工品類 ポスター、パンフレット、はがき、DM、用紙、再生紙、ハンドブック、製紙、紙製品、紙袋、ダンボール等
車両類 自動車、自動二輪、自転車、乗用車、公用車、貨物自動車、消防車、救急車、清掃車、散水車、除雪車、ブルドーザー、フォークリフト、トラクター等
その他輸送・搬送機械器具類 航空機、ヘリコプター、自転車等
船舶類 大型船舶、小型船舶、ヨット、カヌー、船舶用機械、船舶部品、漁業船、調査船、ボート等
燃料類 車両燃料、ガソリン、重油、軽油、灯油、ガス、薪、炭等
家具・什器類 什器、木製家具、鋼製家具、建具、事務机、椅子、箪笥等
一般・産業用機器類 印刷機、製本機、ボイラー、エンジン、旋盤、溶接、集塵、クレーン、印刷事業用機械器具等
電気・通信用機器類 家電機器、照明器具、通信機器、音響機器、配電盤、交通管制機器、レーダー、交換機、伝送装置、通信ケーブル、無線機、蓄電池、発電機、遠方監視装置、レーダー雨量装置、短波、長波、携帯電話、PHS等
電子計算機類 パソコン、電卓、計算機、サーバ、ハードディスク、メモリ、光学ドライブ、汎用ソフトウエア等
精密機器類 X線、計量機器、測定機器、試験分析機器、理化学機器、気象観測機器、質量測定機器、光学機器等
医療用機器類 医療機器、理化学機器、計測機器、測量機器、MRI、AED、介護機器、福祉機器、医療用ベッド等
事務用機器類 細断機、複写機、穿孔機等
その他機器類 厨房器具、消火器具、消火装置、防災器具、自動車検査用機械器具、林業用物品等
医薬品・医療用品類 薬、医薬品、医療用消耗品、X線フィルム、検査試薬、医療用ガス、ワクチン、治療薬等
事務用品類 事務用品、文具等
土木・建設・建築材料 セメント、生コン、アスファルト、木材、石材、砂利、ヒューム管、道路標識、カーブミラー、建築金物、スノーポール等
警察用装備品類 制服、衛服、警報装置、警棒、手錠、警察手帳、銃器関係類、火薬、火工品、硬鉛、その他装備用品
防衛用装備品類 制服、防衛用武器等、防衛用施設機器等、防衛用通信電子機器等、防衛用航空機用機器等、防衛用船舶用機器等、防衛用一般機器等、防衛用衛生器材等、救命胴衣、防衛用その他機器等
その他 運動用具、雑貨、動物、肥料、飼料、農薬、食料品、その他

(2)物品の販売

物品の販売は、物品の製造と同じように、以下の27の営業品目に分かれています。

営業品目 具体的事例
衣服・その他繊維製品類 制服、作業服、礼服、寝具、テント、シート、絨毯、カーペット、タオル等
ゴム・皮革・プラスチック製品類 ゴム、タイヤ、かばん、合成皮革等、FRP製灯塔等
窯業・土石製品類 茶碗、湯呑、皿、ガラス、陶磁器等
非鉄金属・金属製品類 非鉄金属、金属、アルミ、銅、ステンレス、チタン、ニッケル、鋼材、鋼管、ガードレール、パイプ、鉄蓋、鋳鉄、鉛管、ビニール管、ボルト、ナット、ワイヤーロープ、刃物、手工具、ブイ(標体等)
フォーム印刷 フォーム印刷(単票、伝票、連続、複写、ミシン加工、ビジネス帳票等)
その他印刷類 シルクスクリーン、シール、パンフレット、はがき、ハンドブック、オフセット印刷、軽印刷等
図書類 美術、活版、グラビア、雑誌、本、DVD、CD、図書、刊行物、映像ソフト、書籍、新聞等
電子出版物類 電子出版、PDF、電子書籍、CD-ROM、DVD-ROM等
紙・紙加工品類 ポスター、パンフレット、はがき、DM、用紙、再生紙、ハンドブック、製紙、紙製品、紙袋、ダンボール等
車両類 自動車、自動二輪、自転車、乗用車、公用車、貨物自動車、消防車、救急車、清掃車、散水車、除雪車、ブルドーザー、フォークリフト、トラクター等
その他輸送・搬送機械器具類 航空機、ヘリコプター、自転車等
船舶類 大型船舶、小型船舶、ヨット、カヌー、船舶用機械、船舶部品、漁業船、調査船、ボート等
燃料類 車両燃料、ガソリン、重油、軽油、灯油、ガス、薪、炭等
家具・什器類 什器、木製家具、鋼製家具、建具、事務机、椅子、箪笥等
一般・産業用機器類 印刷機、製本機、ボイラー、エンジン、旋盤、溶接、集塵、クレーン、印刷事業用機械器具等
電気・通信用機器類 家電機器、照明器具、通信機器、音響機器、配電盤、交通管制機器、レーダー、交換機、伝送装置、通信ケーブル、無線機、蓄電池、発電機、遠方監視装置、レーダー雨量装置、短波、長波、携帯電話、PHS等
電子計算機類 パソコン、電卓、計算機、サーバ、ハードディスク、メモリ、光学ドライブ、汎用ソフトウエア等
精密機器類 X線、計量機器、測定機器、試験分析機器、理化学機器、気象観測機器、質量測定機器、光学機器等
医療用機器類 医療機器、理化学機器、計測機器、測量機器、MRI、AED、介護機器、福祉機器、医療用ベッド等
事務用機器類 細断機、複写機、穿孔機等
その他機器類 厨房器具、消火器具、消火装置、防災器具、自動車検査用機械器具、林業用物品等
医薬品・医療用品類 薬、医薬品、医療用消耗品、X線フィルム、検査試薬、医療用ガス、ワクチン、治療薬等
事務用品類 事務用品、文具等
土木・建設・建築材料 セメント、生コン、アスファルト、木材、石材、砂利、ヒューム管、道路標識、カーブミラー、建築金物、スノーポール等
警察用装備品類 制服、衛服、警報装置、警棒、手錠、警察手帳、銃器関係類、火薬、火工品、硬鉛、その他装備用品
防衛用装備品類 制服、防衛用武器等、防衛用施設機器等、防衛用通信電子機器等、防衛用航空機用機器等、防衛用船舶用機器等、防衛用一般機器等、防衛用衛生器材等、救命胴衣、防衛用その他機器等
その他 運動用具、雑貨、動物、肥料、飼料、農薬、食料品、その他

(3)役務の提供

役務の提供は、以下の15の営業品目に分かれています。

営業品目 具体的事例
広告・宣伝 広告、宣伝、番組制作、映画、ビデオ、広報、イベント企画等
写真・製図 写真撮影、製図、設計、図面、製本等
調査・研究 調査、研究、計量、計測、証明、統計、市場、交通、シンクタンク、文化財調査、検査、測量等
情報処理 情報処理、入力、データ作成、バックアップ、システム保守、ソフトウエア保守、統計、集計、データエントリー、媒体変換等
翻訳・通訳・速記 翻訳、通訳、速記、筆耕等
ソフトウエア開発 プログラム作成、システム開発、WEBシステム構築、ネットワーク、オペレーション等
会場等の借り上げ 会議施設借り上げ、会場、イベント、設営等
賃貸借 事務、パソコン、機器、自動車、植物、動物、情報機器、医療機器、イベント用品、建物、寝具、植木、物品等
建物管理等各種保守管理 管理、建物保守、監視、清掃、造園、警備、廃棄物処理、害虫駆除、機器保守、電話交換等
運送 タクシー、ハイヤー、荷造り、運送、倉庫、旅行等
車両整備 自動車、車両、航空機、ヘリコプター等の整備
船舶整備 船舶の整備
電子出版 電子出版、CD-ROM、DVD-ROM制作等
防衛用装備品類の整備 防衛用武器等、防衛用施設機器等、防衛用通信電子機器等、防衛用航空機用機器等、防衛用船舶用機器等、防衛用一般機器等、防衛用衛生器材等、防衛用その他機器等の整備
その他 医事業務、検体検査、フィルムバッチ測定等の各種業務委託、登記関連業務、その他

(4)物品の買受け

物品の買受けは、以下の2の営業品目に分かれています。

営業品目 具体的事例
立木竹 ただし、国有林野事業を行う林産物の買受けを除く
その他 鉄屑回収、古紙回収、国有地買い取り、車両等買い取り等

以上、ご覧いただいたように、全省庁統一資格の営業品目は、多岐に分かれています。なお、公共工事については、全省庁統一資格の営業品目には含まれていません。上記の表に掲げた「具体的事例」を参考にしつつ、「自社の得意とする専門分野はどれか?」「発注機関がどういった営業品目で発注しようとしているのか?」といった観点から、営業品目の選択を検討してみてください。

3 適用範囲

(1)全国の仕事が対象に

全省庁統一資格を申請する際には、競争に参加する地域を下記の8つの地域から選択することができます。各地域に支店や営業所がなかったとしても、「参加する地域」に指定することが可能です。たとえば、東京都新宿区にしか営業所がない会社でも、全国すべての8つの地域を競争参加地域として選択することができます。

地域 都道府県
北海道 北海道
東北 青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
関東・甲信越 茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、

神奈川県、新潟県、山梨県、長野県

東海・北陸 富山県、石川県、福井県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
近畿 滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
中国 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
四国 徳島県、香川県、愛媛県、高知県
九州・沖縄県 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県

(2)全8地域を申請の対象に

弊所では、よほどの事情がない限り、全国8つの地域の全てを選択して、全省庁統一資格の申請手続きを行っています。地域を限定したほうが「審査が通りやすい」とか「資格を早く取得できる」といったことはありません。

また、仮に全国を対象として資格を取得したとしても、案件を検索する際には、地域を限定して個別に入札案件を検索することができます。そのため、特段の事情のない限り申請する際に、地域を絞るメリットはないように思います。

4 資格の有効期間

資格の有効期限とは、「一度、取得した全省庁統一資格が、いつまで有効か?」という話です。全省庁統一資格は、令和4.5.6年度、令和7.8.9年度というように3年度ごとに有効期限が設けられています。そのため、資格の有効期間は最大で3年ですが、「資格を取得してから3年間有効」という意味ではありません。

この本を執筆している令和5年8月時点で有効な資格は「令和4.5.6年度の資格」ですので、有効期間は令和7年3月31日までになります。仮に、令和6年9月に資格を取得したとしても、令和6年9月から3年間、資格が有効というわけではなく、令和7年3月31日(令和6年度)でいったん資格の有効期限は切れてしまいます。この場合、全省庁統一資格の有効期間は、たったの7か月間ということになります。

(1)定期受付

定期受付とは、3年に1度行われる受付のことを言います。直近だと、令和4年1月に「令和4.5.6年度の資格の定期受付」が行われました。この定期受付に申請した人は「令和4年4月1日から令和7年3月31日まで」の丸々3年間の、全省庁統一資格を取得することができました。

例年通りだと、次回(令和7.8.9年度の資格)の定期受付は、令和7年1月に実施されることになるでしょう。令和7年1月に実施される「令和7.8.9年度の資格」の定期受付に申請する人は、「令和7年4月1日から令和10年3月31日まで」の丸々3年間の全省庁統一資格を持つことができます。

(2)随時受付

他方、定期受付に申請しなかったからといって、全省庁統一資格を取得できないわけではありません。定期受付の際に申請をしていると丸々3年間の全省庁統一資格を取得できるわけですが、定期受付に申請しなかった場合でも、随時受付を利用することによって、年度の途中から全省庁統一資格を取得することも可能です。随時受付という名の通り、随時(いつでも)受付を行っています。

定期受付と随時受付とで、申請方法や必要書類は、変わりません。唯一の大きな違いは、定期受付に申請していると丸々3年間の資格を取得できるのに対して、随時受付の場合は、年度の途中から(資格を取得してから)しか入札に参加することができず、有効期間が短くなってしまうという点のみです。

「○○省と付き合いがある」とか、「役所の入札案件を常に狙っている」という会社は、全省庁統一資格の有効期間を切らすわけにはいきません。そのため、3年に1度の定期受付への申請を忘れないように、資格の有効期限や定期受付のスケジュールを管理しておく必要があります。

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第2章 全省庁統一資格の取得の仕方

第1章では、全省庁統一資格の大まかな概要を説明しました。「国の機関である省や庁の入札に必要な資格」「物品の製造・物品の販売・役務の提供など全71の営業品目に分かれている」「有効期間は最大で3年」ということについて、ご理解いただけたのではないかと思います。

それでは、実際に全省庁統一資格を取得するには、どのようにすれば良いのでしょうか?残念ながら、実際の申請手続きは、手引きを見て、1つ1つ確認しながら進めていく以外に方法はありません。そのため、この章では、みなさんが申請する際の「ポイント」や「気を付けた方がよい注意点」に絞って、多くの申請手続きを代行している実務家としての視点から、解説していきたいと思います。

1 申請の仕方

(1)インターネット申請

申請の仕方で便利なのは、インターネット申請です。しかし、インターネット申請の場合、推奨OSがWindowsに限定されていてMacが含まれていないこと、推奨ブラウザもMicrosoft Edgeもしくは、Google Chromeに限られているといった点があります。全省庁統一資格のホームページには「推奨環境に合致していない場合、入力が出来ても、申請できません。ご注意ください。」との注意書きがあるので、事前に確認をしてください。

システムの仕様上、入力時間が120分を過ぎると、時間超過のためエラーになります時間がかかりそうな場合は、「申請内容」を一時保存したあと、再度、保存したファイルを読み込むことによって、申請を再開することもできますが、パソコン操作が苦手な人にとっては、少し、難しく感じることがあるかもしれません。

また、インターネット申請の場合、必要書類として指定されている「履歴事項全部証明書」や「納税証明書その3の3」をPDFファイルにして添付送信することが求められています。

以前、弊所で申請したお客さまの中に、履歴事項全部証明書が10枚を超える規模の大きい会社がありました。法務局から取得した履歴事項全部証明書をPDFに変換したのですが、ファイルの容量が大きすぎて、送信することができませんでした。PDFファイルを圧縮したり、画質を落としてみたりしたものの、やはり容量オーバーとなってしまい、何度やっても送信エラーとなってしまいます。結局、インターネット申請を利用したにもかかわらず、必要書類は、別途、受付窓口にレターパックで郵送したという経験があります。

このように、インターネット申請は一見便利にも思えますが、イレギュラー対応が必要になることもありますので、紙申請よりも余計に手間や時間がかかってしまうケースがあるのも事実です。「最初から紙で申請しておけばよかった」という事態にもなりかねないのが、インターネット申請のデメリットと言えるでしょう。

(2)紙申請

以上のインターネット申請に比べると、紙申請はシンプルです。全省庁統一資格のサイトには、「郵送・持参による申請」を希望する人のために、申請書式がExcelとPDFの2つの形式で用意されています。ダウンロードしてプリントアウトしてしまえば、手書きでも申請することが可能ですので、パソコンが苦手な人は、紙申請を選択すると良いでしょう。

また、紙申請の場合には、郵送だけでなく各窓口への持参でも受け付けていますので、どうしても時間がない(郵送処理によるタイムロスさえ、もったいない)という急ぎのケースでは、最寄りの受付窓口に直接持参するという方法をとることもできます。

これから申請をするみなさんにとって、どちらが良いかといえば、ケースバイケースでしょう。インターネットを使った手続きに慣れている人であれば、インターネット申請を選択したほうが便利かもしれません。とは言うものの、MacのPCしかもっていないような場合には、やはり、紙申請を選択せざるを得ないでしょう。 

また、全省庁統一資格の申請は、年に何回もあるものではなく「申請手続きに慣れる」ということはありません。数年前に申請したやり方を覚えている人も少ないことでしょう。有効期間のところで記載したように、次回の申請は、最大で3年後というケースもあります。インターネットだと確実に申請できるかどうか不安だという人もいると思います。そのため、パソコンからプリントアウトした申請書に記入漏れがないか確認し、レターパックなどを使って、窓口に確実に送付するという方法が、これから全省庁統一資格をはじめて申請するという人には、お勧めです。

(3)申請から結果通知書の受領まで

それでは、上記のように滞りなく申請を完了したとして、結果通知書がみなさんの手元に届くのはいつでしょうか?全省庁統一資格の資格審査結果通知書は、普通郵便でみなさんの元に届きます。申請の手引きには、通常、書面が到着してから1週間から1か月程度で資格審査結果通知書を発送します」との記載があります。

実際に弊所で申請した場合でも、おおむね2週間程度で、資格審査結果通知書を受領できています。しかし、ケースによってはそれ以上、時間のかかるケースもあります。

たとえば、新しい年度に入って申請が混み合っている時期や、役所の人事異動・交替などにより審査担当者が不慣れな場合は、通常より多くの時間がかかるものと思われます。また、以前、「この会社は急いでいるので、早くしてほしい」と連絡を入れたところ、「どの会社も受け付けた順番に処理しているので、特定の会社のみ早く審査結果を送付することはできない」と断れたことがあります。さらに、進捗状況を確認しようと受付窓口に電話をしたところ、「担当者がリモートワークで出勤していないので、○日後まで、待って欲しい」と言われることもありました。コロナ禍での特殊な状況であったため、決して、役所を批判しているわけではありません。お役所にもお役所なりの事情があるのでしょう。

1日でも早く資格審査結果通知書を取得したいと急いでいるのに・・という思いもありますが、そこは、審査する側の事情や手引きに記載されているルールを尊重し、待つしかありません。手引きには、1週間から1か月程度と記載がある以上、事前にそのくらいの余裕をもって、申請を行いたいところです。

2 必要書類

全省庁統一資格を取得する際に、必要となる書類は、(1)納税証明書その3の3(2)履歴事項全部証明書(3)財務諸表の3点です。

(1)納税証明書その3の3

全省庁統一資格に限られませんが、国や都道府県の入札は、国民のみなさんから徴収した貴重な税金を財源として実施されています。税金に未納や滞納がある会社が、税金に未納も滞納もない会社を差し置いて、入札に参加し案件を落札できてしまうようでは、不公平です。

そのため、全省庁統一資格を取得する際には、税金に未納がないことを証明するための書類として、「納税証明書その3の3」の提出を求められます

税金に未納や滞納がある会社は、「納税証明書その3の3」を取得することができません。この「納税証明書その3の3」は、税金に未納がないことを証明するための書類だからです。「納税証明書その3の3」を取得できなければ、必要書類が揃わないわけですから、全省庁統一資格を取得することができません。

「納税証明書その3の3」の取得で注意する点は、3点あります。

<都税事務所や県税事務所ではありません>

まずは、「納税証明書その3の3」は、「税務署」で取得するという点です。「都税事務所」や「県税事務所」ではありません。「都税事務所」や「県税事務所」は、あくまでも地方税を扱っている機関です。全省庁統一資格は、国の入札参加資格なので、国税です。国税を担当するのは「都税事務所」や「県税事務所」ではなく「税務署」です。

私の事務所には、歩いて1分のところに「文京都税事務所」があります。そのため、「文京都税事務所」を頻繁に利用しますが、「都税事務所」と「税務署」の違いについて理解されていない利用者が、文京都税事務所に「納税証明書その3の3」の発行を求めに来ている場面に何回か出くわしたことがあります。都税事務所・県税事務所で「納税証明書その3の3」を取得することはできませんので注意してください

<税務署の管轄に要注意>

続いて「税務署であれば、どこでもよいわけではない」という点です。税務署には、それぞれ管轄がありますので、自社を管轄している税務署に行かなければなりません。

たとえば、東京都文京区には小石川税務署と本郷税務署の2つの税務署が存在しています。もし仮に、弊所が自社の「納税証明書その3の3」を取得しようとした場合、弊所の管轄である「小石川税務署」に請求する必要があり、「本郷税務署」に請求しても、取得することができません。同じ東京都文京区内であるにも関わらず、税務署の管轄が分かれているのです。

「納税証明書その3の3」はあくまでも、『管轄』の『税務署』から、取得することを頭の中に入れておいてください。

<延滞税も含めた税金未納に注意>

最後に、税金の支払いを滞納している場合です。この場合「本税の未納分」を支払うのみならず、「本税の未納分を支払うまでに発生した延滞税」も支払わないと「納税証明書その3の3」を取得することができません(延滞税は、税金(本税)の納付期限の翌日から起算され、完納されるまでの日数を基に計算されます)。税金の未納・滞納によって「納税証明書その3の3」を取得できないというケースは、申請実務を行っていると、非常に多く出くわします。

税金を期日まで支払わなかった場合、当該税金(本税)のほかに、本税を支払った日までの延滞税が発生します。「納税証明書その3の3」は、本税を支払うだけでなく延滞税も支払わないと取得できないのです。

以前、お客さまからご依頼を受けて、代理人として税務署に「納税証明書その3の3」を取りに行ったところ、「税金の未納があるため、お出しすることはできません」と断られてしまうケースがありました。

お客さまに連絡し、未納分をきちんと払ったことの確認をして、再度、税務署に行ったところ、今度は、「延滞税を支払っていないため、納税証明書を発行できない」と断られてしまいました。

結局は、お客さまに延滞税まで支払ってもらったうえで、お客さまご自身で「納税証明書その3の3」を取得して頂くということで決着しましたが、急ぎで全省庁統一資格を取得したいという会社に限って、わきが甘いという、悪い例です。

みなさんも同じ失敗を繰り返さないように、税金の取り扱いにはくれぐれも注意を払ってください。なお、申請の際には、発行後3か月以内の「納税証明書その3の3」を添付しなければなりません。発行後3か月以上経過している場合には、再度「納税証明書その3の3」を取得しなおさなければなりません。

(2)履歴事項全部証明書

「納税証明書その3の3」の話が長くなってしまいましたが、「履歴事項全部証明書」は法務局であれば、どこでも取得することができます。本局だけでなく出張所でも取得できるほか、委任状や身分証明書の提示をすることなく、誰でも取得することができます。

全省庁統一資格の申請書類には、「履歴事項全部証明書」に記載されている役員(監査役を除く)の「氏名(フリガナ)」「性別」「生年月日」を記載する「役員名簿」という書類があります。氏名や性別なら、まだしも、生年月日については、普段から把握していないかもしれません。取締役の入れ替わりが頻繁にある会社や、役員の人数が多い大規模会社については、あらかじめ、役員の生年月日などの基本情報をリスト化しておくことをお勧めいたします。

なお、申請の際に必要なのは、発行後3か月以内の「履歴事項全部証明書」であるという点については、「納税証明書その3の3」と同じです。

(3)財務諸表

財務諸表については、それほど説明は要しないでしょう。毎年、決算後に税理士が税務署に申告している決算報告書の中にある「貸借対照表」「損益計算書」などを、財務諸表と言います。「貸借対照表」をバランスシート(B/L)、「損益計算書」をプロフィット&ロスステートメント(P/L)と呼んだりします。

この財務諸表は、提出するのは直前決算1期分のみですが、申請の際には、2期分の売上高を入力する箇所がありますので、直前決算分のみならず、直前々決算の損益計算書も用意しておくと便利です。

また、貸借対照表の中にある「流動資産」「流動負債」「純資産」や、損益計算書の中にある「売上高」の金額は、資格審査の際に、「A」「B」「C」「D」といった等級の決定に用いられます。

等級の決定方法については、第3章で詳しく記載しますが、ここでは、財務諸表の中にある数字(財務状況の良し悪し)によって、会社の等級が変わってくることについて、理解しておいてください。

貸借対照表や損益計算書に関して、その数字を入力するのみならず、必要書類として提出しなければならない理由は、入力が虚偽でないかを確認するとともに、等級の格付けに利用するためでもあるのです。

なお、連結決算(申請会社単独の決算書ではなく、親会社やグループ会社など関連会社全体を含めた決算書)については、認められていません。全省庁統一資格を取得する際に必要な「財務諸表」は、あくまでも「申請会社単独の決算書」であることを覚えておいてください。手引きにも、「連結決算や試算表も財務諸表としては認められていません。必ず、会社単体の確定した財務諸表を提出してください」との記載があります。

以前、弊所のお客さまに、社内の事情で、単独決算の書類ではなく連結決算の書類を使用せざるを得ない会社がありました。ヘルプデスクに相談したところ、そのケースでは、売上高や流動資産など財務上の数字を全て「0」で提出するように求められました。これらの数字を「0」で提出するということは、等級の格付けにおいて、非常に不利です。しかし、仮に、そのような状況であったとしても、「どうしても全省庁統一資格を取得したい」との先方からの強いご要望もあり、そのまま、手続きを進め資格を取得するに至りました。グルーブ会社や連結会社という複数の会社で連結した決算を組んでいる会社は、あくまでも「申請会社単独の決算書が必要である」という点に注意をしてください。

3 申請の際の注意点

「納税証明書その3の3」「履歴事項全部証明書」「財務諸表」が用意できたら、いよいよ、申請です。この章の冒頭にも記載しましたが、もし、みなさんが専門家の手を借りず、ご自身で全省庁統一資格を取得しようというのであれば、都度、手引きを確認し、手引きの記載に沿って、申請手続きを進めていく必要があります。時には、ヘルプデスクに確認の電話をすることが必要になるかもしれません。私が、どんなに詳しく手続きを説明したとしても、みなさん自身で申請する以上、ご自身での手引きの確認作業は必須です。

本書では、実際に弊所が、申請手続きを行う際に注意している4点について、ご紹介して行きたいと思います。

(1)全営業品目の登録はできるのか?

「第1章:全省庁統一資格の基礎知識」で、全省庁統一資格の営業品目は、全部で71に分かれている旨を説明しました。それでは、71個すべての営業品目を選択して、全省庁統一資格を取得することはできるのでしょうか?

71個すべての営業品目の資格を取得することができるとすると、理論上はすべての入札案件に参加することができることになります。

なお、「東京都の物品・委託の入札」は最大で10営業品目まで、「神奈川県の一般委託・物品の入札」も最大で10営業種目まで、と手引きに明記されています。一方、全省庁統一資格の手引きには、「○○個まで」という記載はないため、上限なく営業品目を選択することもできそうです。

しかし、私の経験上、「役務の提供等」の営業品目のすべて(15営業品目)を取得したことはあっても、「物品の製造」「物品の販売」「役務の提供等」「物品の買受け」の全71営業品目で申請した会社は、ありません。実際問題、入札参加資格を取得したとしても、そんなにたくさんの幅広い分野で入札案件を落札できるものなのでしょうか?

まず、71全部の営業品目で全省庁統一資格を取得したとしても、選択の範囲が広まるだけで、それほど落札に有利になるとは思えません。次に、会社として実際に取り扱いのある業務に絞って申請をするように、審査段階で、補正が入ることが想定されます。そのため、全71営業品目での申請は、かなり現実的でないというのが私の見立てです。「第1章:2対象業種」でも記載したように、「発注機関がどういった営業品目で発注しようとしているのか?」「自社の得意とする専門分野はどれか?」といった観点から、営業品目の選択を行うことをお勧めいたします。

(2)「会社の目的」の変更は必要か?

全省庁統一資格の申請の際には、必要書類として「履歴事項全部証明書」を提出する必要があるのは、前述した通りです。そして、その「履歴事項全部証明書」には、「会社の目的」が記載されています。

たとえば、インターネット上のサービスを展開している会社であれば「WEBソフトの制作・運営」「アプリの開発」といったように、会社の営業実態に則した目的が記載されているはずです。

それでは、「会社の目的」の記載の中に「○○の製造」といった文言が一切なく、製造業とはまるで関係のない会社が、「物品の製造の営業品目(たとえば、「ゴム・皮革・プラスチック製品類の製造」)を選択して、全省庁統一資格を取得することはできるのでしょうか?

現実に、ゴム製品の製造を行っているのであれば、「会社の目的」の記載の中、「ゴム製品の製造」という文言があってしかるべきです。一方で、これから入札に向けてゴム製品の製造も主要業務として営業していくというのであれば、「定款」や「履歴事項全部証明書」を変更し、会社の目的の中に「ゴム製品の製造」という文言を追記しなければなりません。

「WEBソフトの制作・運営」「アプリの開発」といった「会社の目的」から推測してインターネット上のサービスを展開しているような会社が、「○○製品の製造」という営業種目を選択するのは、あまりにも現実とかけ離れています。このような場合には、「会社の実態に則した営業品目に絞って、申請を行うように指摘を受ける」か、本当に「ゴム・皮革・プラスチック製品類の製造」の入札に参加するのであれば、「会社の目的」にも「ゴム・皮革・プラスチック製品の製造」という文言を追記するように、登記簿謄本や定款の変更手続きを求められることになるでしょう。

全省庁統一資格の手引きの最新版には「法人の場合、登記の目的の中から関連する営業品目を選択してください」という注意書きがあります。登記の目的と関連性のない、まったく業務を行っていない営業品目での申請は、難しいと考えるべきでしょう。

私の経験上も、「○○の製造」といった表記がない会社が「物品の製造」の中にある営業品目(「精密機器類の製造」)を選択して申請したケースで、本当にその営業品目が必要なのか?会社の目的を追加することができるか?履歴事項全部証明書や定款の変更は可能か?という確認を受けたケースがあります。

もちろん、「選択する営業品目」と「会社の目的」の記載とが、一言一句完全に合致していなければならないわけではありません。しかし、社会通念上、一般的に考えて、会社の目的とかけ離れている営業品目については、たとえ幅広い入札案件を落札するという目的があったとしても、申請が受け付けられない(認められない)というのが、私の経験から言えることです。

(3)「物品の製造」は「設備」に関する入力が必要

「物品の製造」の営業品目を選択する場合には、機械装置・運搬具・工具といった「設備内容」や「設備の額」を入力することが必要です。「設備の額」は、貸借対照表の有形固定資産に記載されている数字から引用することができます。

(2)の記載と少し関連しますが、実際に「物品の製造」を行っているのであれば、製造のための機械や装置はあるはずです。機械・装置がないのに、「物品の製造」を会社の業務として行うのは、通常あり得ません。

そのため、営業品目の中の「物品の製造」を選択する場合には、それ相応の設備が備わっていなければならいない点について、あらかじめ理解しておいてください。

たとえば、『製造設備はありません、製造の経験もありません。けど、「医療用機器類の製造」の入札参加資格が欲しいです。』と言ったとしても、受け付けされる可能性は、限りなく低いでしょう。

(4)有資格者情報の公開

申請の際の注意点の最後に「有資格者情報」の公開について、説明します。

全省庁統一資格を取得すると、会社の情報が「有資格者名簿」に掲載され、インターネット上に公開されます。商号、住所、法人番号、資格の種類(営業品目)、等級まではいいとして、電話番号やファックス番号が公表されるのは如何でしょうか?

とくに全省庁統一資格は、会社の固定電話でなく、社長個人の携帯電話番号を書類に記入し、申請することも可能です。

携帯電話が業務用の携帯電話であればまだしも、社長が私用でも使っている携帯電話の場合は、少し取扱に注意したほうがよさそうです。個人が私用で使っている携帯電話の番号が、ネットで検索できてしまうのは「問題あり」と思う人がいてもおかしくありません。たとえば、あらぬ営業や勧誘などの迷惑電話が、私用の携帯にかかってくるというのは、良い気がしません。

そのため、全省庁統一資格を取得すると、有資格者として、電話番号をはじめとした住所や商号などの会社の情報が、ネット上の有資格者名簿に掲載され、インターネットにつながる環境さえあれば、誰でも自由に閲覧できてしまう点については、あらかじめ理解しておいてください。

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第3章 等級の決定方法と発注予定価格のシミュレーション

第2章では、全省庁統一資格の取得の仕方について見てきました。必要書類や申請の際の注意点については、ご理解いただけたでしょうか?営業品目の選択についても、慎重に判断する必要がありましたね。

続いて第3章では、「等級の決定方法」「発注予定額のシミュレーション」について、説明します。

みなさんの中には、「とりあえず全省庁統一資格を取得できればよい」という人もいれば、「できるなら、『物品の販売』のA等級を取得したい」というように「A」「B」「C」「D」という等級を気にされている人もいるでしょう。そこで、この章では、「等級」や「発注価格」の基礎知識とともに、X社(物品の製造業)、Y社(役務の提供・サービス業)といった架空の会社をモデルに、どのように等級が格付けされているのかも含めて、説明していきたいと思います。

なお、「物品の買受け」については、件数が少ないため、以下の説明では割愛します。

1 等級と発注予定価格

(1)等級と発注予定価格の関係

まずは、下記の等級と発注予定価格の範囲について、ご覧ください。

<物品の製造>

等級 発注予定価格の範囲
A 3000万円以上
B 2000万円以上3000万円未満
C 400万円以上2000万円未満
D 400万円未満

<物品の販売・役務の提供>

等級 発注予定価格の範囲
A 3000万円以上
B 1500万円以上3000万円未満
C 300万円以上1500万円未満
D 300万円未満

等級ならびに発注予定価格の範囲は、<物品の製造><物品の販売・役務の提供>の2つに分かれています。たとえば、<物品の製造>のA等級の会社の場合。発注予定価格が3000万円以上の入札に参加することができます。B等級だった場合には、発注予定価格が2000万円以上~3000万円未満の入札に参加することができます。このように「A」「B」「C」「D」という等級ごとに参加できる入札の発注価格が区分けされています。

A等級の方がより大きい金額の入札に参加でき、続いてB等級、さらにC・D等級というように、等級が下がる順に、徐々に低い金額の入札にしか参加できないという関係性にあります。

(2)等級の決定方法

それでは、このような「A」「B」「C」「D」という等級は、どのように決定されるのでしょうか?この等級決定の方法を示したのが、下記の表です。

<表1:物品の製造>

①年間平均(生産・販売)高/前2か年の平均販売実績
200億円未満

100億円以上

100億円未満

50億円以上

50億円未満

25億円以上

25億円未満

10億円以上

10億円未満

5億円以上

55点 50点 45点 40点 35点
5億円未満

2.5億円以上

2.5億円未満

1億円以上

1億円未満

5000万円以上

5000万円未満

2500万円以上

2500万円未満
30点 25点 20点 15点 10点

 

②自己資本額の合計/純資産の額
10億円以上 10億円未満

1億円以上

1億円未満

1000万円以上

1000万円未満

100万円以上

100万円未満
10点 8点 6点 4点 2点

 

③流動比率
140%以上 140%未満

120%以上

120%未満

100%以上

100%未満
10点 8点 6点 4点

 

④営業年数
20年以上 20年未満

10年以上

10年未満
5点 4点 3点

 

⑤設備の額
10億円以上 10億円未満

1億円以上

1億円未満

5000万円以上

5000万円未満

1000万円以上

1000万円未満
15点 12点 9点 6点 3点

 


①~⑤の合計点数が

90点以上・・・A等級

80点以上90点未満・・・B等級

55点以上80点未満・・・C等級

55点未満・・・D等級


 

<表2:物品の販売・役務の提供>

①年間平均(生産・販売)高/前2か年の平均販売実績
200億円未満

100億円以上

100億円未満

50億円以上

50億円未満

25億円以上

25億円未満

10億円以上

10億円未満

5億円以上

60点 55点 50点 45点 40点
5億円未満

2.5億円以上

2.5億円未満

1億円以上

1億円未満

5000万円以上

5000万円未満

2500万円以上

2500万円未満
35点 30点 25点 20点 15点

 

②自己資本額の合計/純資産の額
10億円以上 10億円未満

1億円以上

1億円未満

1000万円以上

1000万円未満

100万円以上

100万円未満
15点 12点 9点 6点 3点

 

③流動比率
140%以上 140%未満

120%以上

120%未満

100%以上

100%未満
10点 8点 6点 4点

 

④営業年数
20年以上 20年未満

10年以上

10年未満
10点 8点 6点

 


①~④の合計点数が

90点以上・・・A等級

80点以上90点未満・・・B等級

55点以上80点未満・・・C等級

55点未満・・・D等級


 

上記のように、等級の決定方法は、<物品の製造>と<物品の販売・役務の提供>の2つに分類されています。

「物品の製造」の営業品目を選択した場合、表1の①~⑤の点数の合計によって、AからDの等級が決まります。

「物品の販売」または「役務の提供等」の営業品目を選択した場合、表2の①~④の点数の合計によって、AからD等級が決まります。

表1と表2は、非常に似ていますが、まったく同じというわけではありません。点数が付与される項目や付与される点数に若干の違いがあることに注意をしてください。

「2年間の平均実績(売上高)」「自己資本の額」「流動比率」が高ければ高いほど、点数(ポイント)がたくさん付与され、その結果、よい等級に格付けされるということになります。逆に、どんなにA等級を取得したいと思っても、「2年間の平均実績(売上高)」「自己資本の額」「流動比率」などの数字が悪ければ、低い点数(ポイント)しか与えられず、C等級やD等級に格付けされることになります。

それでは、実際に「物品の製造」を行うX社と「役務の提供」を行うY社の数字を使って、等級ならびに発注予定価格をシミュレーションしていきましょう。

2 発注予定価格のシミュレーション

(1)X社の場合

 


希望する営業品目:物品の製造(「衣服・その他繊維製品類」と「警察用装備品類」)

前年度・販売実績売上高:1億9000万円

前々年度・販売実績売上高:1億1000万円

純資産の額:4000万円

流動資産の額:1000万円

流動負債の額:700万円

営業年数:19年

設備の額:5000万円


 

まず、X社が希望する営業品目は「物品の製造」ですから、表1を参考にX社に付与される合計点数を算出しなければなりません。以下見ていくと

①年間平均高=(1億9000万円+1億1000万円)÷2=1億5000万円=25点

②自己資本額の合計=4000万円=6点

③流動比率=1000万円÷700万円=143%=10点

④営業年数=19年=4点

⑤設備の額=5000万円=9点

①~⑤の合計=25+6+10+4+9=54点

X社の付与点数は54点ですので、ぎりぎり「55点以上80点未満」のCに届かず、「55点未満」の等級D、予定価格の範囲は「400万円未満」ということになります。X社は、全省庁統一資格を取得することにより、「衣服・その他繊維製品類」と「警察用装備品類」の「400万円未満」の入札に参加することができるようになります。

(2)Y社の場合

 


希望する営業品目:役務の提供(「情報処理」と「ソフトウエア開発」)

前年度・販売実績売上高:5億6000万円

前々年度・販売実績売上高:5億8000万円

純資産の額:1億2000万円

流動資産の額:800万円

流動負債の額:600万円

営業年数:11年


 

まず、Y社が希望する営業品目は「役務の提供」ですから、表2を参考にY社に付与される合計点数を算出しなければなりません。以下見ていくと

①年間平均高=(5億6000万円+5億8000万円)÷2=5億7000万円=40点

②自己資本額の合計=1億2000万円=12点

③流動比率=800万円÷600万円=133%=8点

④営業年数=11年=8点

①~④の合計=40+12+8+8=68点

Y社の付与点数は68点ですので、「55点以上80点未満」に該当し、等級はC、予定価格の範囲は「300万円以上1500万円未満」ということになります。Y社は、全省庁統一資格を取得することにより、「情報処理」と「ソフトウエア開発」の「300万円以上1500万円未満」の入札に参加することができるようになります。

このように、全省庁統一資格を取得する前に、等級を予測することは可能です。全省庁統一資格を取得した場合、どの等級になるのか?どの価格帯の入札に参加できるのか?を知りたい人は、ぜひ、自社の数字をあてはめて、シミュレーションしてみてください。

3 希望の等級を取得することは可能か?

(1)どうしてもB等級が良いと言われても

仮にシミュレーションした結果、等級が「C」だった場合。できるだけ発注予定価格の高い入札に参加したいからといって、等級を「B」に格上げ(操作)することはできるのでしょうか?こういった問い合わせは、よくあります。「次回の申請では、Aにしたいのですが、どうすればよいですか?」「CではなくBにしたいのですが…」と。

さきほどのY社の例でC等級をB等級にすることができるのか?見ていきましょう。

Y社は、役務の提供のうち「情報処理」と「ソフトウエア開発」とでC等級でした。役務の提供の場合、Cだと「300万円以上1500万円未満」の予定価格です。しかしY社のY社長はこれに満足せず、1500万円以上の案件の落札を狙っています。1500万円以上の「情報処理」や「ソフトウエア開発」の案件を落札するにはAもしくはBが必要です。そのため、Y社長は、なんとかしてCをB以上に変更できないか?画策しています。

「役務の提供等」でB等級を取得するには80点以上が必要です。Y社の現在の付与点数は68点なのでY社がB等級になるには、付与点数が12点足りません。

表2をご覧いただければわかる通り、計算上は、下記①~④の対策を取ることによって、合計12点が加算されY社は自社の格付けをBにすることができます。


①年間平均売上高を10億円以上にする +5点

②自己資本額の合計を10億円以上にする +3点

③流動比率を140%以上にする +2点

④営業年数を20年以上にする +2点


しかし、計算上は、このような操作ができたとしても、実際上は、できません。なぜなら、「第2章:2必要書類」の箇所で記載したように、全省庁統一資格を取得する際には必要書類として、「財務諸表」や「履歴事項全部証明書」の提出が必要だからです。

「財務諸表」には、売上高、自己資本額(純資産)、流動資産、流動負債の記載があるため、貸借対照表に記載されている数字と違う数字が記載されていたら申請が通りません。また、営業年数についても「履歴事項全部証明書」に会社の設立年月日の記載があるため、嘘をつくことはできません。

これは、前述のX社の例にも当てはめることができます。

X社の①~⑤の合計点数は54点でした。55点に1点満たないためD等級になってしまいました。仮にX社の営業年数を19年ではなく、20年にして申請することができれば、表1の「④営業年数」の点数が「4点から5点に1点アップする」わけですから、最終的な合計点数も55点にアップし、等級がDからCに格上げされることになります。

しかし、この場合も、同様に、営業年数については、「履歴事項全部証明書」で確認されるため、虚偽の申請をすることはできません。

ここまで書けばわかると思いますが、たしかにDよりもC、CよりもB、BよりもAというように、良い等級を取得し、大きい額の案件を受注したいという気持ちはわかります。しかし、全省庁統一資格をはじめ、入札は公平であるべきです。「より大きい金額の案件を受注したいから、よりよい等級に格付けされる」なんていうことがあれば、入札の公平性を保てるわけがありません。

入札参加資格の申請手続きを専門としている弊所には、「知り合いの議員が融通をきかせてくれるらしい」「役所の人が配慮してくれた」「等級を上げるための裏技があるという噂を耳にした」というような、常識では考え難い問い合わせが入ってくるのも事実です。

本書をお読みいただいている賢明な読者のみなさんは、そのような情報に惑わされることなく、正々堂々と資格を取得し、自社に付与された等級を受け入れたうえで、入札にチャレンジしてもらいたいものです。

(2)更新申請での等級アップはありうる

なお、上記に記載した虚偽申請が許されないのは言うまでもありませんが、実際に等級が変わるケースがないわけではありません。たとえば、先ほどのX社のケース。

申請した際には、営業年数が19年であったため等級はDでしたが、翌年になれば営業年数は20年になるため、等級はCになるはずです。このような場合には、現在持っている全省庁統一資格の「更新申請」を行うことによって、以後の格付けをC等級にすることはできます。

また、年度がかわり、売上高をはじめとした財務状況が向上し、現在保有している等級よりも、上の等級を取得できる状況になった場合には、同様に「更新申請」を行うことによって、等級アップを狙うことは可能です。

全省庁統一資格は、一度取得した等級を、その資格の有効期間中、ずっと、変更できないわけではありません。申請時点ではDであったものの、更新申請を経ることによって、“資格の有効期間中”にCやBに格上げされる可能性があることは、ぜひ覚えておいてください。

4 実際の案件を見てみよう

ここまで、等級の格付けについて、詳細に記載してきましたが、実際の案件を見てみると「AやBという等級」にそれほど、こだわらなくてよいケースがあります。この章の最後に私見も踏まえて、実際に発注された案件をご紹介させて頂きます。

(1)A又はBの等級に格付けされている者であること

まずは、デジタル庁から発注された「電子調達システムの運用業務の請負」という案件について。

この案件には、競争参加資格として「令和4.5.6年度全省庁統一資格において『役務の提供等』のA等級に格付けされた者であること」という条件が付されていました。この案件には、文字通り、A等級を持っている人しか、入札に参加することができません。

一方で、内閣官房から発注された「内閣感染症危機管理統括庁に関するウエブサイト構築・運営等業務」という案件について。

この案件には、競争参加資格として「令和4.5.6年度内閣府競争参加資格(全省庁統一資格)『役務の提供等』のA又はBの等級に格付けされている者であること」という条件が付されていました。この案件には、A等級のみならずB等級の人も、参加することができます。

(2)A、B、C、又はD等級に格付けされている者であること

さらに、内閣府から発注された「令和5~9年度中央防災無線網インターネット接続サービス等の提供業務」という案件について。この案件には「令和4.5.6年度内閣府競争参加資格(全省庁統一資格)の『役務の提供等』においてA、B、C、又はD等級に格付けされている者」というような条件が付されていました。

この場合、等級に関係なく、当該営業品目の全省庁統一資格を持っていさえすれば、入札に参加することができてしまいます。

このように、A等級を持っていないと参加できない案件があることはもちろんのこと、A等級を持っていると逆に参加できない案件があったり、何かしらの等級を持っていさえすれば参加できる案件があったりと、実際に発注される案件によって、バラバラであることがお分かりいただけたと思います。

ここからは、私見になりますが、たしかに、売上高や財務状況によって点数が付与され、その合計点によって等級の格付けが行われ、さらに、その等級ごとにおおよその発注予定価格が決まるという大きな枠組みが存在することは事実です。しかし、その枠組みも絶対ではなく、「A、B、C、又はD等級に格付けされている者」というような発注のされ方もありうる以上、格付けに対してそれほど、神経質になる必要はないのではないか?というのが私の考えです。

以前、「この入札に失敗すると首が飛ぶ」「この案件に社運が掛かっているので、絶対にA等級が欲しい」ということをおっしゃる法人担当者もいらっしゃいました。しかし、入札は自社だけで行うものではなく、同じ入札案件の落札を虎視眈々と狙っている同業他社もいるわけです。案件の落札には等級や格付けのみならず、その時の運も影響してくるわけですから、AやBという等級に、あまりにもこだわりすぎるのは如何なものでしょうか?

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第4章 特殊な申請

第1章から第3章までは、一般の法人を念頭に記載してきましたが、この章では、「新規設立法人」「外国事業者」「合併・分割」「官公需適格組合」の4つの特殊な申請について記載します。ケースとしては、それほど多くありませんので、みなさんの会社が、この4つのどれにも当てはまらないということであれば、第5章に進んでもらって構いません。

実際、弊所で受任する件数としても、多くはありませんが、それでもご依頼があるということは、お困りのお客さまがいらっしゃるということです。以下、なるべくわかりやすく簡潔に記載しました。

1 新規設立法人

全省庁統一資格は、新規設立法人(法人設立後1期目を終えていない会社)でも、取得することができます。これは、東京都や神奈川県の入札参加資格と大きく違うところです。東京都の場合、法人設立後決算を終了し、1期目の税務申告を終えてからでないと、入札参加資格を取得することができないルールになっています。

第2章で記載した必要書類のうち、「納税証明書その3の3」および「履歴事項全部証明書」は、通常の会社と同様に、それぞれ、管轄の税務署および法務局で取得することが可能です。「納税証明書その3の3」は、1期目の決算を迎えていなくても取得することができます。

他方、新規設立法人(法人設立後1期目を終えていない会社)の場合、決算を1度も迎えていないわけですから、「財務諸表」の提出は不要です。まだ決算を迎えていないため、財務諸表を提出することができないという表現の方が正確かもしれません。そのため、売上高や流動比率などの数字は「0=無いもの」として扱われ、格付けについては、通常の会社より不利であることが想定されます。

とはいえ、東京都や神奈川県といった地方自治体と違って、設立直後の会社にも省庁への入札の門戸が開かれているわけですから、積極的に入札にチャレンジして行きたいという人にとって、チャンスであることに間違いありません。

2 外国事業者

全省庁統一資格は、外国事業者でも取得することができます。日本国内に支店があるか否かを問いません。日本国内に支店がなかったとしても、全省庁統一資格を取得することができます。また、日本国内に登記があるか否かも問いません。日本国内に登記がなかったとしても、全省庁統一資格を取得することはできます。

つまり、日本国内に本店・支店といった営業所がなくても、日本国内に登記がなくても、全省庁統一資格を取得することができるのです。

弊所でも、過去に2社ほど、アメリカ国籍の会社の全省庁統一資格の取得を代行した経験があります。両社とも、日本国内に支店や営業所がなく、かつ、日本国内に登記もされていない会社でした。

外国事業者が全省庁統一資格を取得する際に注意する点は、必要書類に関して、本国から取り寄せた書面(原文)に日本語訳をつける必要があるという点です。

たとえば「履歴事項全部証明書」については、日本国内に登記されている支店がない以上、提出することができません。そこで「履歴事項全部証明書」に代えて「本国の所管官庁又は権限のある機関の発行する書面およびその書面の日本語訳」が必要になります。納税証明書についても同様です。財務諸表については、日本国通貨による金額表示とともに、「申請日現在において有効な外国貨幣換算率により換算した金額の記載」が必要になります。

弊所では、英語をはじめ外国語に対応できる職員がいないので、申請の際にはお客さまに翻訳書類などをご用意頂きました。上記の書類をご用意いただければ、日本国内外を問わず、世界中の会社からご依頼を賜ることが可能です。

3 合併・分割

会社の合併や分割があると、申請手続きは、非常に複雑になります。考え方としては、(ア)合併・分割があった後、初めて資格を取得するのか?それとも、(イ)すでに資格を持っている会社が合併・分割をしたのか?という2つのケースに場合分けして検討する必要があります。

たとえば、A社がB社を吸収合併する場合(A社が吸収合併存続会社、B社が吸収合併消滅会社となる場合)を考えてみましょう。

・A社がB社を吸収したあとに、A社が初めて資格を申請する場合、A社が行うのは「新規申請」

・すでに資格を持っているA社がB社を吸収合併する場合、A社が行うのは「更新申請」(※注)

・すでに資格を持っているB社がA社に吸収合併される場合、B社が行うのは「資格の取消届」

といったように、申請の種類が変わってきます。

(※注)A社が「更新申請」を行うのは、吸収合併によりA社に等級の変動がある場合のみ

また、必要書類についても、合併や分割を行った複数会社分の財務諸表、納税証明書が必要になるほか、合併や分割が適法に行われていることを証明するための合併・分割契約書、定款も必要になります。

合併や分割といった企業再編は、滅多に経験することではありませんが、自分の会社が合併・分割の当事者にならないとも限りません。

私が過去に担当した案件で以下のようなことがありました。全省庁統一資格を持っている会社(甲社)の担当者から「甲社(変更前)から丙社(変更後)に社名が変更するので、手続きをして欲しい」という依頼があったのです。

「社名が変わる」ということでしたので、「商号の変更届」の提出で足りるかと思ったのですが、実際には、甲社と乙社が合併する事案でした。そこで、私は、「甲社(依頼主)と乙社(他社)が合併して丙社になるのであれば、(甲社・乙社ともに消滅し、丙社が誕生する)新設合併か?」と思ったのですが、詳細に話を伺っていくうちに、実際には、「甲社が乙社を吸収合併したうえで、丙社に社名を変更する」という、吸収合併+商号変更の流れであることが判明しました。

もし、新設合併であったとしたら、(甲社は消滅するわけですから)甲社の資格取消届と丙社の新規申請が必要です。しかし、実際には、甲社は、乙社と合併したのちも(名前を丙社に変更するにしろ)存続するわけですから、資格を失わせるわけにはいきません。そのため、新設合併であると勘違いしたまま、手続きを進めてしまっていたら、甲社の資格取消届を提出後、甲社(社名変更後の丙社)は無資格者となり、全省庁の入札に参加できない期間が生じることになってしまいます。

上記のケースでは、「甲社の更新申請」と「甲社から丙社への商号の変更届」を行うのが正解です。もし、消滅する乙社も全省庁統一資格を持っていたなら、乙社の資格取消届も必要でしたが、乙社は全省庁統一資格を持っていませんでしたので、乙社の資格取消届の提出は不要でした。

「甲社から丙社に社名が変わるので、商号変更の届出で足りる」と思ったのですが、そうではなかったのです。

「単なる商号変更なのか?それとも合併なのか?」「あたらしい会社が誕生する新設合併なのか?それとも存続会社が消滅会社を吸収する吸収合併なのか?」「存続する方の会社が全省庁統一資格を持っているのか?それとも、消滅する方の会社が全省庁統一資格を持っているのか?」は、よく確認しなければなりません。単なる商号変更の場合、法人番号は変わりませんが、合併や分割の場合、法人番号が変わります。また、新設合併か、吸収合併かは、合併契約書で判断することができます。

以上のように、合併や分割を伴う申請は、とても複雑です。「過去に合併や分割を行った会社が全省庁統一資格を持つ場合か?」と、「現に全省庁統一資格を持っている会社が合併や分割を行おうとする場合か?」を明確に場合分けしたうえで、手引きの該当箇所をよく確認し、申請の種類、記入事項、必要種類を間違いのないようにしなければなりません。

4 官公需適格組合

官公需適格組合とは、「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律」に基づき、中小企業庁(経済産業局長又は沖縄総合事務局長)により官公需適格組合証明書が発行された組合のことをいいます。官公需適格組合という言葉自体、聞きなれない言葉ですので、なかなかイメージがわきにくいかもしれませんが、簡単に言うと、「中小企業者が官公庁の入札の受注の機会を増やすために結成された組合」と理解していただければよいのではないかと思います。

官公需適格組合の場合、官公需適格組合単体として全省庁統一資格を申請することもできれば、官公需適格組合と組合員とが一体となって全省庁統一資格を申請することもできます。

後者の場合、組合単体の点数に組合員の点数が加点されるという特例が設けられているため、組合単体だとD等級のところ、組合を構成する組合員の点数を加算することによって、より上位のA~C等級の取得も可能になります。

たとえば、Z組合(官公需適格組合)とその組合員であるV社、W社、X社、Y社があったとします。Z組合は、組合単体で全省庁統一資格を取得することができます。この場合の申請手続きは、通常の法人の場合と同様です。もっとも、Z組合単体の数字だと等級格付けが芳しくないような場合、組合員であるV社やW社の点数を加算して、「Z組合および組合を構成する組合員V社、W社」という形で、申請することができます。もし仮に、組合員V社、W社の協力だけで目標とする等級に達しないのであれば、X社、Y社にも要請し、「Z組合とV社、W社、X社、Y社」という形で、全省庁統一資格を取得することもできます。この場合、Z組合の点数にV社、W社、X社、Y社の点数が加算されるわけですから、Z組合は、単体で申請したときよりも等級を上げることができるのです。

但し、組合員であるV社、W社、X社、Y社の「履歴事項全部証明書」や「納税証明書その3の3」や「財務諸表」も用意する必要があります。

弊所でも、官公需適格組合及びその組合の構成員である6社分の申請を行ったことがあります。6社分の「履歴事項全部証明書」「納税証明書その3の3」「財務諸表」が必要であったため、書類の収集に苦労しましたが、組合単体だとC等級のところ、組合員とともに申請することによって、B等級の取得に成功することができました。

官公需適格組合で、全省庁統一資格を取得するというのはとてもレアなケースですが、読者のみなさんの中に組合を構成されている人がいれば、ぜひ、参考にしてみてください。

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第5章 電子証明書の取得と環境設定・利用者登録

さて、本書もいよいよ佳境に入ってきました。今までは、全省庁統一資格を取得するための知識や手続きについて記載してきましたが第5章は、全省庁統一資格を取得した「後」の手続きについての説明です。全省庁統一資格を取得するだけなら、電子証明書やICカードリーダは必要ありません。しかし、全省庁統一資格を取得した後、電子入札に対応するためには、「電子証明書とICカードリーダの取得」「パソコンの環境設定」「調達ポータルでの利用者登録」という手続きが必要です。

1 電子証明書とICカードリーダの取得

(1)電子入札コアシステム対応の民間認証局

全省庁統一資格を取得した後、電子入札を行うには、電子証明書やICカードリーダの準備が必須になります。電子証明書を利用するためのパソコンの環境設定や調達ポータルでの利用者登録をしなければ、紙入札には対応できても、電子入札には対応できないのです。

公表されている入札案件を見てみると「本案件は、電子調達システム(政府電子調達(GEPS))の電子入札機能利用対象案件である」という記載があり、原則として電子入札であることが明記されています。但し、「電子入札によりがたい者は…、紙入札方式とすることができる」として、例外的に紙入札にも対応している旨の一文が付記されています。

このように「電子調達システムを利用した電子入札を行うこと」が念頭に置かれている以上、紙入札ではなく、電子入札に対応できるような体制を整えておくべきでしょう。

電子入札に必要な電子証明書やICカードリーダは、ビックカメラやドン・キホーテといった量販店から購入するものではなく、電子入札コアシステム対応の民間認証局から購入する必要があります。

具体的には、以下の機関が発行している電子証明書でなければなりません。

※一部例外がありますので、詳しくは調達ポータルサイト(https://www.p-portal.go.jp/pps-web-biz/UZA01/OZA0101)でご確認ください。

会社名 サービス名
NTTビジネスソリューションズ(株) e-ProbatioPS2
三菱電機インフォメーションネットワーク(株) DIACERT-PLUSサービス
(株)帝国データバンク TDB電子認証サービスTypeA
(株)トインクス TOiNX電子入札対応認証サービス
日本電子認証(株) AOSignサービス

(2)電子証明書を取得するための必要書類

それでは、電子入札コアシステム対応の民間認証局から電子証明書(およびICカードリーダ)を購入するには、どうしたら良いのでしょう?認証局に赴いて「電子証明書をください」と言ってお金を払えば、その場で購入できるものなのでしょうか?実は、電子証明書の購入は、簡単にできるものではありません。

民間認証局から電子証明書を購入する際には、購入申込書ととも、「代表者個人の住民票」「代表者個人の印鑑証明書」「法人の印鑑証明書」「履歴事項全部証明書」などの公的書類が必要になります。

電子証明書は、入札手続きを行うためのインターネット上の身分証明書です。カードの内部には、代表者の氏名・会社の商号・所在地といった大事な情報が格納されます。そのため、電子証明書の購入には、購入申込書のほかに、これらの公的書類が必要になるのです。

上記のような公的書類を用意したうえで、購入申込手続きを行うことによって、おおむね1週間程度で、電子証明書を発行してもらうことができますどんなに急いでいるからといって、申込当日に受け取れるということはないので、注意してください。

(3)電子証明書取得の際の注意点

<有効期間>

電子証明書を購入する際には、電子証明書の有効期間を何年に設定するかについて注意が必要です。私が知る限り、どの認証局も、電子証明書書の有効期間に応じて、購入価格を設定しているからです。

たとえば「有効期間1年=1万円」「有効期間2年=2万円」・・・「有効期間5年=5万円」といった具合です(法令上、電子証明書の有効期間は、5年を超えないものと定められています)。この場合、購入価格を安く済ませたいからといって、「有効期間1年」を選んだりすると、入札案件を1件も落札できないうちに、再度、電子証明書を購入しなければならないことになります。

一方で、「有効期間が5年(最長)」の電子証明書を購入するとなると、5年後も入札に参加しているかどうかわからないのに、高い価格のカードを購入することになり、費用面で負担に感じることでしょう。

期間と費用のバランスから、弊所では、「有効期間3年」を選択するようにお勧めしています。電子証明書を購入する際に、有効期間の選択で迷ったら参考にしてみてください。

なお、電子証明書の費用は、各認証局によって異なります。また、割引価格を用意しているところや付随するサービスが充実しているところもあるようです。みなさんが、ご自身で電子証明書を購入する場合には、ぜひ、各民間認証局のホームページを比較・検討してみてください。

<本人限定受取郵便>

電子証明書は、電子証明書の名義人である代表者の住民票上の住所に、本人限定受取郵便で発行されます。本人限定受取郵便とは、配達を担当する郵便局に郵便物が到着した後、その郵便物を受取人に配達するのではなく、郵便物を当該局に留め置き、到着通知書を送ることにより「郵便局に郵便物が到着したこと」を受取人にお知らせするシステムです。そのため、電子証明書の名義人は、郵便局から「通知書」が届いたあと、その「通知書」と「運転免許証などの本人確認書類」を持参して、郵便局まで電子証明書を受け取りに行かなければならないのです。会社あてに郵送してもらうことも、宅配便のように宅配ボックスに預け入れておいてもらうこともできません。

電子証明書は、入札手続きを履行するために必要なインターネット上の身分証明書になります。会社の代表者の氏名・商号・所在地といった大事な情報が格納されているため、このような厳重な取扱がされています。

<電子証明書の名義人>

「電子証明書(ICカード)の名義人を誰にするか?」という点についても、注意が必要です。通常、電子証明書の名義人は、会社の代表取締役です。そのため、電子証明書を購入する際に必要な住民票などは代表取締役のものが必要ですし、代表取締役の住民票上の住所あてに本人受取限定郵便で電子証明書は発行されます。

しかし、代表取締役以外の人を電子証明書の名義人にすることも可能です。たとえば、東京支店の支店長、東京支社の支社長というように、「代表取締役から入札に関する権限の委譲を受けていて、代表取締役に代わって省庁の入札に関する責任を負うような立場にある人」は、電子証明書の名義人になることができます。

一方で、どんなに入札に関する事務手続きを行う立場にあったとしても、単なる営業担当や事務担当では、「入札に関する権限を代表取締役から委譲されている」とは言い難いので、電子証明書の名義人になることができません。

電子証明書の名義人を代表取締役以外の人(支社長や支店長)にしたような場合、発行申込に必要な住民票などの「公的書類」も、支社長や支店長のものを用意するということになります。

2 パソコンの環境設定・調達ポータルでの利用者登録

民間認証局から電子証明書とICカードリーダを購入した際には、PIN(暗証番号)の通知も発行されます。PIN(暗証番号)は、電子証明書を利用してログインする際の暗証番号ですので、絶対になくすことのないように管理しなければなりません。「電子証明書」「ICカードリーダ」「PIN(暗証番号)の通知」の3点が揃ってから行うのが、「パソコンの環境設定」と「調達ポータルでの利用者登録」です。

(1)パソコンの環境設定

パソコンの環境設定については、「①購入した電子証明書やICカードリーダが、みなさんのパソコンで、問題なく作動するような環境設定」と、「②調達ポータルというサイトを利用するためのセットアップ」の2段階に分かれています。

パソコンの環境設定については、手引きやマニュアルを参考にしながら、行って頂くほかありません。(①については、電子証明書を購入した民間認証局が発行するマニュアルを、②については、調達ポータル上にあるマニュアルをそれぞれ参考にする必要があります)。もし、パソコンの操作が苦手で、できそうにないという人がいれば、弊所のような専門家に外注することをお勧めいたします。

「第2章:1(1)インターネット申請」で記載したのと同様に、資格を取得する場合のみならず、電子入札に参入する場合においても、推奨OSはWindowsに限定されていてMacは含まれていません。また、推奨ブラウザもMicrosoft Edgeもしくは、Google Chromeに限られています

(2)調達ポータルでの利用者登録

パソコンの環境設定が終わったら利用者登録です。この点についても、操作マニュアルを見ながら作業して頂くほかありませんが、前述したように、利用者登録ができるのは、全省庁統一資格を取得した後です。

手続きの流れとしては、利用者登録を完了すれば、電子入札のための環境がすべて整ったことになります。

なお、繰り返しになりますが、紙入札で構わないという人は、第5章で記載した手続きを行う必要はありません。しかし、世の中は「電子化」の流れに向かっています。本書の記載で、大枠は理解できているはずです。全省庁統一資格を取得した後、落ち着いた段階で、ぜひ、電子入札のための準備にもチャレンジしてみてください。

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第6章 全省庁統一資格を少しでも早く取得した方がよい理由

いよいよ本書も終わりに近づいてきました。第6章では、「全省庁統一資格を少しでも早く取得した方がよい理由」と題して、早め早めに準備しておく心構えについて、注意喚起も込めて記載します。

「時間がないので、急いで審査をしてください」「入札の締め切りを、もう少し先に延ばしてください」と言っても役所が融通をきかせてくれることはないでしょう。

私は、かれこれ、10年近く、全省庁統一資格の申請代行を行っています。そんな私の経験談も踏まえ、「どうせなら、もっと早く資格を取得しておけばよかった」という後悔をさせないために、この第6章を記載しました。

1 来週の月曜日までに資格を取得することはできないか?

ちょうど、本書の執筆を開始したころ、弊所ホームページをご覧いただいたとあるお客さまから「来週の月曜日までに資格を取得することはできないか?」というお問い合わせがありました。聞くところによると、令和1.2.3年度の資格は持っていたものの、令和4.5.6年度に切り替わるタイミングで、定期受付に申請するのを失念していたらしく、資格の有効期限を切らしてしまっていたとのことです。

しかも、どうしても落札したい案件の入札期限が来週の月曜日とのこと。会社の担当者らしき人が、慌てているのが、電話からも伝わってきました。問い合わせを受けたのは、火曜日の午後でしたから、翌週の月曜日まで時間がありません。

弊所としては、手際よく申請手続きを行えば3日間で「申請」できなくはありません。いまやっている仕事、業務を一時的にストップして、すべての時間をそのお客さまのために使えば、申請までに3日もあれば十分かと。しかし、そのお客さまは、来週の月曜日までに資格を「取得」したいというご要望でした。

なんとか力になってあげたいのは、やまやまでしたが、こちら側が急いで申請したとしても、役所側(審査側)が急いで審査をし、結果通知書を即日発行してくれるとは限りません。

仮に、受付窓口に「急いで欲しい」と伝えたとしても「手引きには、1週間から1か月と書いてあるのですから、1週間程度は、余裕を見てください」と言われるのが関の山です。

そのため、「来週月曜日までの『申請』でしたらお約束できますが、来週月曜日までの『資格の取得』となると、役所の都合もあるため、お約束はできない」旨の回答をしました。

その後、お客さまからの連絡はありませんでしたので、「時間的にかなり厳しい」と理解したのでしょう。お目当ての案件に対する入札はあきらめざるを得なかったと思います。

このような事態を避けるためにも、全省庁統一資格は、取得できる時に取得しておくべきなのです。

2 実際に公開されている案件ごとのスケジュール

それでは、「最終期限までスケジュールがどれほどタイトなのか?」を具体的な案件で見ていくことにしましょう。

(1)案件1 障害者合同面接会の会場運営

この案件は、実際に、調達ポータルに掲載されていた厚生労働省から発注された案件です。

詳細 日にち
公開開始日 8月2日
入札説明書、仕様書の交付期限 8月18日
入札参加届等書類の提出期限 8月26日

この案件には、「役務の提供」の「B」「C」「D」の等級に格付けされていれば、入札に参加できる旨の条件が付されていました。「A等級の場合のみ」とか「B等級の場合のみ」といった案件よりも、比較的、多くの事業者に参入の機会があることがわかります。

しかし、公開開始日が8月2日であるのに対して、入札説明書の交付期限が8月18日、入札参加届出等の書類の提出期限が8月26日と、公開開始から入札期限まで3週間程度しかありません。

運よく8月2日に、この入札案件が公示されていることに気付いたとしても、そこから全省庁統一資格の取得の準備を行い、2週間後の入札説明書の交付期限、3週間後の入札参加届出等の書類の提出期限に間に合わせるのは、至難の業です。

「急げば何とかなる」というレベルを通り越して、「物理的に難しい」と言ってしまったほうがよいかもしれません。

(2)案件2 アクリルパーテーションなどの購入

この「案件2」も「案件1」と同じようには、調達ポータルの調達情報に掲載されていた公正取引委員会から実際に発注された案件です。

詳細 日にち
公開開始日 10月4日
入札説明書、仕様書の交付期限 10月15日
入札参加届等書類の提出期限 10月20日

この案件は、「物品の販売」で「A」「B」「C」「D」の等級に格付けされていれば、入札に参加できる案件でした。「物品の販売」はA~Dまでの等級しかないので、何かしらの等級を持っていれば、入札自体への参加はできるわけです。

但し、この案件が公開されたのは10月4日です。その11日後の15日には、入札説明書や仕様書の交付期限を迎え、16日後には、入札参加届の提出期限を迎えます。土日祝日もあることですから、かなり短い期間で期限を迎えてしまうことがお分かりいただけるかと思います。

公開日の10月4日に、「公正取引委員会がアクリルパーテーション購入といった案件を発注していること」に気が付けば良いですが、もし、この案件に気付くのがもっと遅ければ、準備に費やせる期間は、もっと少なくなるわけです。

このように、「全省庁統一資格を持っている状態での2~3週間」であれば、それほど、急ぐことなく入札に向けた準備ができることでしょう。しかし、「全省庁統一資格を持っていない状態からの2~3週間」となると、かなり厳しいのが現実です。

事前に全省庁統一資格を持ってさえいれば、落札に至った可能性のある入札案件を、「有効期限を切らしていた」「全省庁統一資格を持っていなかった」という理由で、取りこぼすとなると悔やんでも悔やみきれません。

こういった事態を防ぐためにも、時間に余裕があるとき、手が空いているときに、すこしでも早く全省庁統一資格の取得に着手してみてはいかがでしょうか?

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終わりに:困ったときは、自分でやるか?プロに頼むか?

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。全省庁統一資格について、ご理解いただけましたでしょうか?

全体の概要を大まかに理解できたなら、あとはやるだけです。ご自身で資格の取得にチャレンジする人もいれば、外部の専門家に外注したいと思う人もいるでしょう。もちろん、自分でやるだけの時間とノウハウがあれば、自分で手続きを行うのも悪くはありません。

しかし、みなさんにとって大事なことは、「資格を取得するための手続き」や「電子証明書の取得」「パソコンの環境設定」を自分自身で行うことなのでしょうか?

ここからは、YouTube動画で話したり、過去に出版した書籍に書いたりしていることなので、どこかで聞いたことがある人もいるかもしれません。しかし、重要なことなので本書でも再度、説明します。

1 手続きにかかる費用は、先行投資

当たり前のことを今さらのように書きますが「時間は有限」です。みなさんにとっても、私にとっても、時間は平等に過ぎていきます。時間をかけてマニュアルを読んだり、ヘルプデスクに問い合わせをしながら申請手続きを学ぶことによって、ほかの人の手を借りず自分自身の力で、全省庁統一資格を取得することができるかもしれません。

しかし、みなさんにとって重要なのは、「資格を取得すること」ではなく、「取得した資格を活かして案件を落札すること」ではないでしょうか?「資格を取得すること」は、目的ではなく、準備段階にすぎません。その準備段階で、悪戦苦闘し時間と労力を費やすのは、もったいなくないでしょうか?

「外部の専門家に外注するとお金がかかるので自分でやる」という人がいます。しかし、私に言わせれば、専門家に依頼すれば3日で済むのに、自分でやろうとして2週間も3週間も掛けているのであれば、そっちの方がよほど、もったいないと思うのですが、如何でしょうか?

全省庁統一資格は最大で3年間有効です。しかも、国の機関である「全省庁」の「数百万円から数千万円」の入札案件に参加することができる資格です。このように考えると、手続きにかかる費用は「先行投資」として、案件落札のための「必要経費」と捉えることができます。

もちろん、無理に外注する必要はありません。しかし、弊所のような専門家に依頼することで、手続きや書類の作成作業に煩わされることなく、安心かつ安全に心の余裕を持って、本来の業務に専念することができるのです。

2 こんなにできる申請のプロ

弊所では、ご依頼をしてくださったお客さまに代わって、

・全省庁統一資格の申請を代行することができます。

・申請に必要な「納税証明書その3の3」や「履歴事項全部証明書」を取得することができます。

・申請後、全省庁統一資格の結果通知書を代理人として受領することができます。

・電子証明書やICカードリーダの購入手続きを代行することができます。

・受取代理人として電子証明書やICカードリーダをみなさんに代わって、受け取ることができます。

・みなさんの会社に伺って(もしくは遠隔操作を利用して)パソコンの環境設定、調達ポータルでの利用

者登録をすることもできます。

まさに、手続きの最初から最後まで、すべてを御社に代わって代行することができるのです。これにより、みなさん自身が手引きやマニュアルをダウンロードして読み込むことも、電子証明書の購入申込手続きを行うことも、郵便局に赴いて電子証明書を受領することも、パソコンの環境設定を行うことも、必要ありません。

「本来業務が忙しくて申請手続きに割く時間がない」「すこしでも早くスムーズに資格を取得したい」とお考えのみなさんは、ぜひ、専門家の活用を検討してみてください。

3 弊所にご依頼頂いた際の費用

このページの最後に、弊所に全省庁統一資格をご依頼いただいた際の料金表を掲載させて頂きます。

項目 詳細 価格
全省庁統一資格の取得 行政書士報酬として 110.000円
納税証明書1通 法定必要書類として 2.200円
履歴事項全部証明書1通 法定必要書類として 2.200円
費用の合計 114.400円

※正式にご依頼を頂き次第、請求書を発行いたします。請求書発行後5営業日以内に指定の口座にお振込みをお願いいたします。

さて、私がみなさんにお伝えしたいことはすべてお伝えしました。あとは、みなさんがどう判断するかです。

それでは、みなさんの1日も早い案件落札を祈念して、終わりにしたいと思います。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。

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